迷宮階段
☆☆☆

 何度も躓いて転けそうになりながら、私は学校の校門前にやってきていた。
 振り向くともうふたりは追いかけてきていなかった。

 両膝に手をついて肩で呼吸を繰り返す。
 昨日と同じで、肺が痛いくらい全力で走ってここまで来た。少し休みたいけれど、もうそんな時間は残されていない。

 私はスマホで時間を確認して、校舎内へと急いだ。
 途中矢沢先生に見つかって「私服姿でなにをしてるの!」と怒られたけれど、立ち止まりもしなかった。

 今日で全部終わらせる。全部元通りにするんだ。
 目立たない友達でいい。口うるさいお母さんでいい。お小遣いも少なくていい。太った幼馴染でいい。説教の多い担任でいい。

 私は元から全部持っていたんだ。自分が一番幸せになれるものを、元から持っていたんだ!
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