迷宮階段
 暗くてジメジメした梅雨の時期も麻衣たちには全然関係ないみたいだ。
「おっはよ! 真美!」

 麻衣が私の背中を少し痛いくらいに叩く。
「そんなところに突っ立ってどうしたの?」

「え?」
 普段普通の挨拶くらいは交わすけれど、こうして自然に会話に流れていくことはほとんどなくて返答に戸惑う。

 私は麻衣と里子を交互に見つめた。里子は興味を失ったのか、すぐに本へ視線を戻してしまった。
「麻衣、真美、こっちおいでよ!」

 麻衣の取り巻きが雑誌を広げて手招きをしている。
「麻衣、行こ!」

 真美が私の腕を掴んで歩き出す。あっけにとられたている私は転けそうになりながらもなんとか麻衣についていった。
「やっぱり今年の新作バッグはどれもかわいいねぇ」

「絶対欲しいよね! でもちょっと高いかぁ」
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