迷宮階段
紺色のスカートは腰のところを折って短くしていて、麻衣が入ってきた途端に教室の中が華やかになるのがわかった。
みんなが麻衣に挨拶をして、麻衣は自分の席へ向かう。近くを通り過ぎていった時、微かな香水の匂いが香ってきた。嫌味じゃないその匂いについ顔を向けてしまう。

「真美、おはよ」
真美と麻衣。

名前が似ているせいか、麻衣は時々私に話し掛けてきてくれる。ほとんど接点のない私たちだけれど、実は少しだけ嬉しかったりする。
「麻衣、おはよ」

私は麻衣を真似してそう返事をする。
麻衣はニッと口角を上げて白い歯をのぞかせて笑うと、また歩き出す。その後姿をつい目で追いかけてしまう。

麻衣はA組のリーダー敵存在で、友人も多い。麻衣が席につくと同時に数人の女子生徒たちがすぐに近づいていく。
「今日も相変わらずの美人だねぇ」

麻衣を見つめて里子が呟く。その呟き声で私は現実に引き戻された。
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