迷宮階段
 勇気を振りしぼって声をあげる。その内容に私は唖口をポカンと開けて唖然としてしまった。
「海人と麻衣が? そんなはずないじゃん」

「で、でも本当に見たの。昨日駅前で、腕を組んで歩いてたから気になって」
 うろたえながらおも必死な里子が嘘をついているようには見えなかった。

 そもそも、里子は人を傷つけるような嘘をつく子じゃないことを、私が一番よく知っていた。
「なにそれ。どういうこと」

「わからないけど、でも……桃屋さんには気をつけたほうがいいかも」
 里子はそれだけ言うと、逃げるように教室を出ていってしまったのだった。
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