迷宮階段
☆☆☆

 翌日、私は洗面所の前で丁寧にアイメークをしていた。
 幸い目の充血や腫れはそれほどでもなく、顔色も悪くなかった。そして、それを見たお母さんが学校を休ませてくれるはずもなかった。

 メークで目元を隠すと、とりあえずは見えるような顔になった。ホッと胸をなでおろしてキッチンへ向かう。そこではすでに両親が朝食を食べていた。

「そんなに濃いメークをして学校へ行くの?」
 お母さんが私の顔に驚いたように聞いてくる。

 今日は泣き顔を隠すために目の下にも白いシャドーを入れたりした。こうすれば目元が光に反射して見えて、もしも涙が出てきたとしても悟られにくくなる。

「今はこれが流行ってるの」
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