迷宮階段
三度目の交換
 女子トイレの個室でこっそりスマホを操作して麻衣のお父さんに関して調べてみると、有名企業だけあって簡単にヒットした。
 顔も、名前もネットに出ている。

「へぇ、桃尾和夫さんって言うんだ」
 ネット情報を確認して私はニヤリと笑う。

 この人が父親になってくれれば私だって好きなコスメを好きなだけ買ってもらうことができる。
 今は格安コスメを集めているけれど、もうそんなことをする必要はなくなるんだ。

 それに、コスメだけじゃない。きっと服もバッグもジュエリーも、欲しいと言えばなんでも手に入るんだろう。
 想像してゴクリと唾を飲み込んだ。もしもそんな世界に暮らすことができればどれだけ幸せだろう。
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