迷宮階段
☆☆☆

 スマホ画面を確認すると四時四十一分を回ったところだった。
 やっとこの時間がやってきた。私はすでに屋上へと続く階段の下から四段目に立っていた。心待ちにしすぎて、十分前からここで待っている。

 スマホの時計の進みがやけに遅く感じるのは、今回の交換をそれほど楽しみにしているからだった。
「あと三分。あと三分」

 ぶつぶつと口の中で呟く。それはまるで誕生日プレゼントをもらうのが待ちきれない子供のようで、我ながら呆れてしまう。
 けれど期待する気持ちを押さえることができない。

 四時四十二分になった。ゴクリと唾を飲み込む。
 あと二分。あと二分すれば私の人生は大きく変わる。私は明日から社長令嬢になるんだ!

 緊張から、心臓が早鐘を打ち始めた。
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