迷宮階段
☆☆☆

 ついにやってしまった。お母さんの次に、お父さんまでも。
 ドキドキする心臓を胸の上から押さえながら帰宅すると、お母さんはダラダラとリビングのソファに寝そべってテレビを見ていた。

 香の母親は子供や夫に対して放任主義だけれど、その分自分も好きに生きていくタイプみたいだ。
 私はゴミが散乱しているリビングをチラリと確認しただけで、すぐ自分の部屋へ向かった。

 お母さんが見ているドラマには全く興味がないし、汚いリビングにいたいとは思えない。
「って言っても、私の部屋もあんまり変わらないんだけどね……」

 自室へ入ると雑誌やマンガが散乱している。ゴミ箱の中もパンパンに詰まっているのだけれど、誰もなにも言わないから捨てるのを忘れて放置してしまっていた。

「まぁいっか。香の部屋だって汚かったみたいだし」
 すぐに気を取り直して学生カバンを投げ出し、ベッドに横になる。手を伸ばして昨日購入したばかりのマンガを手に取った。
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