迷宮階段
 こうしてベッドに寝転んでお菓子を食べながらマンガを読んで入れば、前のお母さんならすぐに文句をつけてきた。

『そんな風にダラダラしないの』
『ベッドの上に食べこぼしちゃうでしょう』

 何度も言われてきた言葉を思いだし、胸の辺りが少しだけ切ない気持ちになった。
 あのお母さんは、もう私のお母さんじゃい。今は香のお母さんになって、毎日小言を言っているはずだ。

「ふんっ。私にはもう関係ないし」
 私は胸の隙間風を無視してそう呟いたのだった。
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