迷宮階段
 そう思い直して二度寝しようとしたけれど、お腹が減ってうまく眠れない。仕方なくまた目を開けてのろのろと上半身を起こした。

 大きくあくびをしてスマホの時計を確認すると、すでに一一時を過ぎていた。
 その時間に驚いて目を見開いてしまう。今まで休日だからといってここまで眠ったことはなかった。いつも九時にはお母さんが起こしにやってくるからだ。

「すごい寝ちゃったんだ」
 咄嗟にすぐ起き出して着替えようとするけれど、はたと思い直す。

 そうだ。もう別に慌てて着替えて、顔を洗う必要だったないんだ。そんなことをしなくても、注意されることはないんだから。
 私はパジャマ姿のまま鼻歌交じりに階下へ向かう。

 キッチンのドアを開けるとそこには大柄な男性が立っていて、思わず悲鳴を上げそうになった。
 その人はキッチリと紺色のスーツを着込んで今にも仕事へ向かいそうな装いだ。

「真美。おはよう」
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