迷宮階段
 不審そうな顔になるお父さんの手から一万円札を受け取る。
 休日の度にお小遣い一万円!?それは今までの自分の生活からは考えられない贅沢だった。さすが、大企業の社長だ。

「そ、そうだったよね。ごめん」
「この家も本当はもっと大きくしたいんだけどなぁ。思い出があるから、なかなか改築できないんだ」

 お父さんは小さな我が家を愛おしそうに眺める。本当の桃尾家はいったいどれほど大きいのだろう。きっと、私の想像もつかないくらいだろう。

 やがて外に車が停車する音が聞こえてきてお父さんがカバンを手にした。
「じゃ、行ってくる」
< 81 / 164 >

この作品をシェア

pagetop