迷宮階段
 お見送りのために玄関先まで出ていくと、そこには黒いハイヤーが横付けにされていて運転手さんが待っていた。
「社長、おはようございます」

 車からおりてきた運転手さんはうやうやしく頭を下げて、後部座席のドアを開ける。
 その奥にはすでに会社の人が一人乗っていて、移動しながら仕事を始めるらしいことがわかった。

「い、行ってらしゃい」
 私は車に乗り込むお父さんへ向けて、どうにかそう言ったのだった。
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