迷宮階段
☆☆☆

 家を出る時、お母さんはまだ眠っていた。昨夜の夫婦げんかの影響で眠いのだろう。
 私は汚い廊下をつま先立ちして歩いて、玄関を出た。

 外はとてもいい天気で、梅雨時だなんて信じられないくらいだ。約束場所のコンビニまでやってくると、すでに全員が集まってきていた。

「真美、今日も誘ってくれてありがとう」
 さっそく香が声を駆けてくる。

「え? あぁ、うん、別にいいんだよ?」
 どうやら父親が変わったことで、みんなの中の記憶も少しずつ変化しているみたいだ。いつもみんなを遊びに誘っていたのは麻衣の方なのに。

「今日はどこ行く? 真美の好きなところでいいよ?」
「そう? じゃあ、ゲームセンターでも行こうかなぁ」

 この前好きなキャラクターのぬいぐるみがUFOキャッチャーの景品になったと、ネットニュースで見たばかりだ。
「いいね! 行こう行こう!」
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