《番外編》妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました
傍に居て、ギュッと抱き締めて
「――亜夢!」

 愛しい彼女の名前を口にしながら手を伸ばした瞬間、辺りは暗闇に包まれる。

「百瀬くん?」
「――ッ!?」

 そして、暗闇の中から俺を呼ぶ声が聞こえてきたと思ったら心配そうに俺を覗き込む亜夢の姿がそこにあった。

 どうやら今のは夢だったみたいだ。

 身体を起こし、頭を軽く掻いた。

「大丈夫? 何だか酷くうなされてたみたいだけど……」
「ああ、うん。ちょっと、夢を見てたみたいで……」
「夢? 怖い夢だったの?」
「うん、凄く怖い夢だった――」

 そう言いながら俺は亜夢の身体を引き寄せると、そのまま強く抱きしめる。

「百瀬、くん?」
「暫く、こうさせて?」
「……うん、いいよ。よっぽど怖い夢だったんだね? でも、もう大丈夫だよ」

 俺の背に手を回した亜夢は、ポンポンと規則正しいリズムで背を叩きながら安心させてくれている。

 俺が今さっき見ていた夢の内容はハッキリ覚えている訳じゃないけど、亜夢が、俺の前から居なくなってしまうというものだった。

 それはどんな事よりも怖く、恐ろしい。亜夢が俺の前から居なくなってしまうなんて例え夢でも、もう二度とあって欲しくはない。

 とは言え、あくまでも夢の出来事な訳で、それなのにこんなにも恐怖を感じるなんて、それだけ俺は亜夢の事を好きなんだと改めて実感する。

 ギュッと抱き合っていても、まだ足りない。

 もっと深く繋がり合わなければ、この恐怖が取り除かれない気がした俺は、

「亜夢――」

 名前を呼び、顎を掬い上げるように取ると、そのまま亜夢の唇を塞いでいく。
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