溺れるように愛して
『……わたしだけ?』
『そ』
『どうして?』
『さぁ』
『また濁す』
『花咲さんはどう?俺に嫉妬すんの?』
『……するよ』
『なんで?』
『……知らない』


そのまま終わってしまった。フェードアウトするように、綺麗さっぱりなくなってしまった。

会話の進め方なんて分からない。でも、わたしはあの時なんて言えば良かったの?

少なくとも「知らない」は間違いだっただろうか。もっと素直に答えるべきだったんだろうか。

……いや、言えない。

わたしが本音を語ったところで、はぐらかされるのが怖い。言葉を濁されるのが怖い。

だから本気になれない。なりたいけど、なれない。


「当たって砕けろ」「もう、なんでフラれる前提なの」「だって可愛い彼女がいたら、ね?」「もしかしたら、って可能性にかけたいもん」



次第に遠のいていく声を、最後まで一人寂しく聞き終えた。
告白したいといった女の子気持ち、分からなくもない。


期待してしまうんだ。「もしかしたら」って。

でもその反面、粉々に砕かれるのが怖くて、進めない。
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