溺れるように愛して
そう考えると、わたしは本当に憶病で、あの子の方がよっぽど強い。フラれる覚悟というものが、わたしにはまだ備わっていないから。

同じクラスで、関係がなくなったとき、とても気まずい思いをすることになる。

接点のないわたしたちは、本当に接点がなくなって、でも”そういうことをしていた”という事実だけは残って。

削除したくても出来ない思い出たちを、わたしはきちんと消化出来る自信がない。

だからこのままを続けてしまう。曖昧な関係を続けてしまう。

―――
――


「ねぇ紗子」
「……」
「身分の差ってどう埋める?」


休み時間だって、女学生を極めたような彼女、門松紗子は本をこよなく愛するが故に、その世界にどっぷりと浸かっている。

そんな彼女にめげることなくわたしは顔と本の間に割り込むようにして乗り出す。


「……邪魔」
「そういう話とかあるでしょ?結末は?」
「……はぁ」


そして、嫌々そうに本を机に置く。しっかりと栞を挟んでから。

深くついた溜息は彼女の鬱憤がぐっと詰まっているような気がする。
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