溺れるように愛して
「それはもう、当たってるってことね」
「……あの、はい」
「はぁ」


彼女はここ一番の溜息をついた。

その反応に地味に傷付きながらも、さて、どうしていけばいいんだろうかと必死で脳内を駆けまわった。

わたしは何をするのが正しい?もう彼女に白状することが正しい?


―――言えない。言えないこともある。あれとか、それとか。


「好きな人は夏目くん?」
「はい……」
「夏目くんには可愛い幼馴染がいる」
「はい……」
「朝も夏目くんに合わせて早起きしてる」
「はい……」


友達だというのに何故だか尋問を受けているみたいだ。

しゅん、となっていくわたしの姿に同情でもしたのか「別にいいんだけどさ」と前置きをされた上でこう続けられた。


「好きになったのが夏目くんってことは別に悪いことじゃないよ。でも、どうなの?わたしは川瀬くんの方がよっぽどいいと思うんだけど」


的確だ。いつだって彼女は正しいことを言ってくれる。それはいつだって間違ってはいない。
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