溺れるように愛して
「夏目くん、もしかして風邪?」
「この姿を見て、他になんだと思うの?」


ベッドに横たわる彼は、呼吸するのもしんどそうに眉をしかめる。

あの飄々としている彼が、今日はやつれているというのがなんだか信じられなくて。


「夏目くんでも風邪引くんだね」と思わずポロリと出てしまったわたしに対して「バカでも風邪引くんだね、と同じ言い方だよねそれ」と突っ込みが入る。



様子がおかしいとは思っていたけど、あの時から症状がおかしかったんだろうか。

あの「充電」なんて不可解な行動と関係があるのか。いまいち線は繋がらないけど、ひとまず部屋を見渡す。



「すごい汚れてない?散らかってない?」
「花咲さんが来てくれないから」
「美人なおねーさんは?」
「もう契約するのやめた」
「そうなんだ」


どうやら部屋の清掃はわたし頼みにしているらしい。

確かにお金がかからず、部屋を掃除してくれる業者があるのなら遠慮なく乗り移るに決まっているか。

まあ、業者でもなんでもないんだけど。
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