溺れるように愛して
「俺、ゼリーも好きだけど、プリン派なんだよね」
「へぇ、忘れとく」
「そこは覚えとくでしょ」


人が買って来てあげたというのに、文句は一丁前。
ぐったりしていても、口が悪いというか、性格が曲がってるのは通常通りの様子。

ありがとうの一言さえもらえればこっちとしては買ってきた甲斐は感じられたのだろうけど。

「お金、そのへんから取って」
「いいよ、今回は貸しってことで。じゃあ、ゆっくり休んで」



部屋は片付けて綺麗さっぱり。おまけにこんなものまで買い揃えてあげるなんて、いよいよわたしは彼の彼女にしてもらわないといけないんじゃないか。

立ち上がろうとベッドに手をつけば、


「待って」


ぐっと掴まれる手首。
熱があるのか、体温の高い手はか弱くわたしを制止する。


「帰んの?」
「え……帰る、けど」
「……ふーん」


未だ繋がったままの手首は、解放されるどころか何も状況が変わらない。

「え、夏目くん?」

困惑気味のわたしに彼は顔を逸らす。普段あまり見えない首筋に視線がいく。
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