溺れるように愛して
鼓動が早くなる。これは夏目くん――いや、わたしか。

自分の胸の高鳴りが尋常じゃないスピードで音を立てていく。


そんなわたしをからかうみたいに「緊張してんの?」なんて笑われる。


「……いきなり、だから」
「そうだね、いきなりだ」


頭をぽんぽんと撫でられる。彼らしくないそれは、優しさの塊みたいなものに近いようで、普段しない仕草に緊張が増す。

ベッドの上で抱きしめられるのなんて初めてなんかじゃないのに。

こんなこと、何度だってしてきたことなのに。

どうしてだか、裸で抱き合うよりも、衣服を着たままの方が緊張するのはどうしてなんだろう。



「人肌が恋しいってやつ?」
「そうかもね」
「このまま抱かれてると、わたし、夏目くんから風邪を移されそうなんだけど」
「いいじゃん、その時は俺が看病しに行ってあげるよ」
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