溺れるように愛して
「……ねぇ、」
「ん?」
「あの時」
「うん」
「あの時……なんでわたしを抱きしめたの?」
「……」
再テストをサボって。ようやく現れたかと思えば、彼は学校なのにわたしを抱きしめたりなんかして。
それはきっと深い事情がないとそんなことはしない。
踏み込んでいいのか分からないけど、今なら、少し弱ってる彼になら、近付いてもいいような気がした。
「……ああ」
抱きしめられる力が弱まる。顔を見上げれば、伏目がちな彼の顔がある。
「……キス、されそうになったから」
一度、言うのを躊躇ったけれど、吐き出すように言葉を続けた。
わたしと目を合わせることのない彼は「あの日、」と振り返るように、ぼそぼそと話す。
「呼び出されて、告白されて、断ったらキスされそうになって。思わず突き飛ばした。条件反射みたいなもので……気付いたらそうしてた」
思い出したくないのかもしれない。
そう思わせるような顔つきをしていた。何度も息をついて、暗い影を落として。
「ん?」
「あの時」
「うん」
「あの時……なんでわたしを抱きしめたの?」
「……」
再テストをサボって。ようやく現れたかと思えば、彼は学校なのにわたしを抱きしめたりなんかして。
それはきっと深い事情がないとそんなことはしない。
踏み込んでいいのか分からないけど、今なら、少し弱ってる彼になら、近付いてもいいような気がした。
「……ああ」
抱きしめられる力が弱まる。顔を見上げれば、伏目がちな彼の顔がある。
「……キス、されそうになったから」
一度、言うのを躊躇ったけれど、吐き出すように言葉を続けた。
わたしと目を合わせることのない彼は「あの日、」と振り返るように、ぼそぼそと話す。
「呼び出されて、告白されて、断ったらキスされそうになって。思わず突き飛ばした。条件反射みたいなもので……気付いたらそうしてた」
思い出したくないのかもしれない。
そう思わせるような顔つきをしていた。何度も息をついて、暗い影を落として。