溺れるように愛して
「寝れる?」
「うん、抱き枕あるから」
「わたし?」
「そ。よく寝れそうなやつ」
ぎゅっと強く、一度離れかけた隙間を埋めるみたいに寄せられて。彼の胸の鼓動を聞いていた。
どく、どく、と、一定のリズムを刻むみたいに、安心するような音。
「……花咲さん、来てくれてよかった」
「そうなの?」
「うん……ぜんぜん、ねれなかった、から」
途切れるように言葉が、ぷつん、ぷつん、と途絶え、最終的には寝息のようなものが聞こえてくる。
どうやら寝れなかったのは本当らしく、すぐに眠りについてしまった様子。
動くと起こしそうなので、そのままじっと抱かれたままでいることにした。