溺れるように愛して
――わたしは、

夏目くんに何がしてあげられるんだろう。

嫌な思い出があって、それに寄り添ってあげたいと思うけれど、そんなの簡単に出来ることじゃなくて。

いつも飄々としてるから、こんなか弱い彼は初めてで戸惑う。


キスが嫌だと思ってしまう程に、過去にどんな傷を抱えてしまったのだろうか。

それは、彼の情緒をいとも簡単に取り乱してしまうような、深く深く刻まれたような傷で。

わたしはそんな傷に、触れてしまっていいのか分からなかった。


「……分からないことばかりだよ、夏目くんは」


ぼそり、と。呟いたわたしの声は、静まり返った部屋で儚く消えていった。
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