溺れるように愛して
「んー……なんだろ。あまり変化がないから話すこともないっていうか」
「ないんだ?」
「そう、だね」


夏目くんが風邪を引いて一週間。

今となっては元気いっぱいで登校してくる彼は相変わらず男子生徒と楽しそうに高校生活をエンジョイしている。

変化は、あまりない。

彼の家ですることはしてるけど、それは前と変わらないし、可愛い幼馴染も最近は朝のバスで見かけない。

変わり映えのしない毎日で、どこか不満を持つことさえ忘れてしまったのかもしれない。

紗子に話したいと思う内容がない程に、わたしは今の生活に満足しているのかもしれない。


「川瀬くんは?あれから」


階段をのぼり、廊下を歩きながら実験室を目指す。

下級生の階にある実験室は、心なしかどこか若さを感じられるような、活気に満ちているような気がする。

これは年のせいだろうか。たった一つしか違わないというのに。


「川瀬くんは……変わらないよ。なにも」


彼女には、川瀬くんに告白の返事をしたことを伝えてある。その内容も、彼女は知っている。
< 147 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop