溺れるように愛して
ベッドの上だけ限定の低く掠れた声色に私は静かに首を振る。

「帰るよ、明日も学校だし」
「……ふーん」

含みのあるような響きに「なんで?」と聞き返せるだけの勇気はない。
裸同士の付き合いなのに、心を裸にした事なんて一度だってない。

そんな事はこの先も許されないのかもしれない。その想いにぐっと蓋をするように小さく吐いた息。苦しさを紛らわせるだけの簡単で目に分かりやすいもの。

このまま彼の匂いが染みついたシーツで一晩を明かせればどれだけ幸せなのだろう。
心を奮い立たせるように体を起こし、衣類を手繰り寄せるように手を伸ばす。

「……なぁ、ほんとに帰んの?」
「っ、」

普段の彼からでは想像も出来ないような甘い顔。やわらかく目を細め、まるで帰ってほしくないと言わんばかりに緩み切ったその表情に、私はどうも弱くて。

私のこと、まるで彼女みたいな扱いをするから、そんな雰囲気に惑わされないよう自分を強く保とうと頭では理解してるはずなのに、
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