溺れるように愛して
「それって……」


その意味を上手く咀嚼することが出来なくて、でも受け止めたくて、追及するように言葉を出してみたけれど。


「ごめんねぇ、職員室で氷もらうだけなのに校長に捕まっちゃって」


申し訳なさそうに保健室へと戻った先生によって、その話が続行される事はなかった。

内心しょんぼりとする心の内を見透かしたのか、彼はそっと耳打ちをするように近付いて、


「……今日、待ってる」


わたしにしか聞こえないような声色で囁かれ、人肌に戻っていた体温は再び上昇。

ぎこちなく頷いたわたしを、彼はどんな顔で見ていただろうか。


その表情さえも確認出来ない程に、一瞬で彼の熱に侵されそうになる。


「はい。しばらくは冷やしておくのよ」



こんもりと入った氷の袋を受け取りながら、その冷たさが体中にいきわたれと願うよう、しばらく手の中におさめていた。
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