溺れるように愛して
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もう一人で生きていけると思っていたけれど、こんな時に、好きな人と同じクラスになるもんじゃない。
またしても夏目くんを視界に入れないような生活を送る日がくるなんて、結局また逆戻りだ。
彼は、わたしに対して何かを言ってくることはなかった。
学校では話しかけないのが暗黙のルールになっていたから、当然と言えば当然なのかもしれないけど。
消化しきれないこの想いをどうするべきか、そればかりを考えた一日。
紗子に励ましてもらえなかったら、きっと今日を迎える事でさえ恐怖を抱いていたかもしれない。
息が詰まるような時間を長時間過ごし、ようやく迎えた放課後ではやっと息が吸えるような気がした。
夏目くんを頑張って視界に入れないようにするのは至難の業と言っても過言ではない。
油断すると視線を送ってしまいそうになるのを何とか堪えるように、彼という存在を意識しないようにした。
「なぁ夏目、結局今日はどうすんだよ?」
それでも、彼の名前には過剰に反応してしまう。
クラスメイトに声をかけられた彼を見まいと帰る準備を進めていくものの、耳がそのやり取りを敏感にキャッチしようとしている。