溺れるように愛して
「今日、俺ん家来てくれる?」


今更ながらに控え目な質問。あれだけ大胆な行動をしていた人が、こんな風に投げかけてくるなんて。

あの勢いだったらわたしは彼の家に連れ込まれていてもおかしくはないと思うけど。


「……いやだ」


拒否権はないと言った。でも、そんなのはわたしには関係ない。

わたしは怒っているのだから。ショックを受けてるんだから。そう言わんばかりの顔を向ければ、彼は「そっか」と呆気ない返事をした。


「うん、でも花咲さんを連れて行くけどね」
「っ、なんで」
「俺がそうしたいから」


わたしの驚きと拒絶はほどほどに、彼はそのままマフラーに顔を埋めるようにして喋るのをやめてしまった。
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