溺れるように愛して
「なんで泣くの」
「…っ、だって、あの人とくっつくんじゃないかって…」
「なんで。違うよ。花咲さんにちゃんと告白しようと思って昨日呼んだのに。あんな場所で告白なんてしたくなかったし。それに、告白するなら、ちゃんとあの人との関係を清算しようと思ったから」


温かく、棘のないその言葉が、今はすんなりとわたしの頭に入っていく。

悲しみに打ちひしがれている中、夏目くんはきちんとわたしのことを考えてくれていた。

その事実だけで、わたしは当分なんでも頑張れそうな気がした。



「ねぇ、花咲さんの返事聞いてないけど」
「っ…いる?」
「もちろん」
「……っ」



どこまでも曖昧にし続けた。どこまでも隠し続けた。

まるで道化師を演じるみたいに、笑って、誤魔化して、嘘をついて。

彼の隣りにいられるなら、わたしはどれだけでも嘘つきになってやろうと、そう思っていたけど。



「……好きに決まってるじゃん、ずっと」
「はは、なんでそんなツンツンしてんの」
「夏目くんが悪いんだよ」
「うん、そっか、ごめんね」
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