溺れるように愛して
ようやく言えた想いは、まさか”はは”と笑って流されてしまうようなものだとは思わなかったけど、現実ってそんなものなんだと思う。

わたしの人生という話では、こういう告白のシーンが一番最適だったのかもしれない。そう思うと妙に納得した。



「ほんとに、ほんとーに我慢したんだから」
「そうなの?」
「夏目くん何も教えてくれないし、近付くと離れていくし、可愛い幼馴染いるし、元カノ現れたかと思うし」
「わぁ、大変だったね」
「わたしは真剣に――っ」


視界が彼の顔で埋め尽くされたのは突然のことだった。

熱を帯びた唇が、自分のと重ねってると気付いた時、初めてキスされていると理解する。

目をぱちくりとさせているわたしに対して、彼はやっぱり笑う。


「ごめん、あまりにも可愛かったから」


そう言って、拒み続けたキスをいとも簡単に落としてみせたのだ。

驚きで声を失ってるわたしに彼は「びっくりしてる」と目を細めて、「でも」とその続きを語る。


「我慢してんのは俺も一緒だったよ」


まるで愛おしいものを見るみたいな瞳で、わたしという存在をはっきりと映して、
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