溺れるように愛して
「可愛く喘ぐ花咲さんに何度いれようと思ったか」
「っ……なんで、今その話っ」
「はは、真っ赤」


ふいっと視線をそらせば、顎をくいっと引かれ結局元に戻される。

弧を描くようにして上がった口角を見て、全部を見透かされていると悟る。



「花咲さんもそうだったでしょ?」
「……知らない」
「そ?いれてほしいみたいな顔してたよ」
「……してない」
「ふーん?」


ふっと笑われたかと思えば、視界がぐらりと揺れ、体が宙に浮くような……まるでこれは昨日の──


「もう我慢出来ないから襲うね」


お姫様抱っこをする彼は、王子らしからぬ発言を最後にベッドへと直行。

有無を言わせない雰囲気とともに、ぎしっと軋んだ音とともにシーツの上へとおろされる。


「多分、俺、今日は余裕ない」


そう言って、噛みつくような、貪るようなキスの嵐が容赦なく降り注ぐ。
ずっと避けられてきた唇が熱で侵されていく。


「あー……かわい」
「っ、なんか夏目くん、キャラ変わってない?」
「そ?でもずっと思ってたよ」


至近距離で見える綺麗な顔。目にかかる髪の奥からは澄んだ黒い瞳。
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