溺れるように愛して
恋は盲目とはよく言ったもの。もう私には彼しか見えていないし、今更後戻りなんかも出来ない。

彼の腕の中にいられるなら、私は喜んで隙間に入っていく。


「……夏目くんって誰とでもするの?」

「むしろ花咲さんも誰とでもすんの?」

「聞いてるの私なんだけど」

「俺も聞いてるけど答えてくんないじゃん」


見てるだけだった彼の顔が、今すぐ目の前にあって、彼の瞳に私のシルエットが映り込んで、本当は心臓がもたないぐらい緊張してるのに。


「……夏目くんって慣れてる?」

「慣れてるように見える?」

「分かんない」

「俺からすると花咲さんの方が余裕そうで慣れてるように見えるけど」


男の人の部屋なんて初めてで、男の人のベッドだって当然初めてで、こんなシチュエーションも初めてで。

全部が全部初めて尽くしなのに、どうしてだろう。

彼に触れられる度に、知らないはずの快感に溺れていく気がするの。

頬を、首筋を、ただ指でなぞられるだけで自分が自分じゃなくなっていくみたいで。

怖いと思うのに、触れてほしいって思ってしまう。
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