溺れるように愛して
「ねぇそれって本当に友達関係?」

「え?」

「そこ、付き合ってるとかって可能性はないの?」

「……ない、と信じたい」


ただの幼馴染、だと疑いたくはない。疑いたくはないが、


「……まぁ、家族に近いような関係には近いかもしれないけど」


幼馴染とは、一体どこまでの関係だというのか。

少なくとも私と紗子は家族ぐるみで仲が良いし、これがある程度の幼馴染に当てはまるとしたら、あの二人もただの友達ではない。


「ふーん。まぁ私が言えるのは、そこには関わらない方がいいってところね」

「……関わらないけど」

「どうせ天音が好意を抱いてる人の話でしょ」

「っ、なんで?!」

「最初からそんな顔で話してる」


咄嗟に両頬を押さえるが、そんな私に「ほら、やっぱりね」と冷めた目で見てくる。やめとけと言われてるのに「こいつは全然人の話を聞かないな」と彼女の心の声が聞こえる。

分かってるさ。最強の幼馴染に私なんて凡人が勝てないことに。

ましてや二人だけの約束があったら、私には到底その世界に入れる訳がないだもの。

……幼馴染とか、本当、羨ましい。
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