溺れるように愛して
そんな都合の良い解釈ばかりして、わたしはあまり夏目くんの方が見られなかった。

板挟み状態となるように、わたしを挟んで頭上では「俺が女装したら行けそうだけど」なんて冗談を交えた会話が広がっていく。


「まぁ夏目って女顔だしな」

「自分でも思う」

「中性的だからモテんだろうな」

「まぁな」

「認めんなよ」


男子ならではの会話に、真ん中にいるわたしは上手く入っていけない。

元々社交的でもないし、誰とでも話せるようなスキルは持ち合わせていない。

ましてや男子となんて、それこそ異世界なみに遠い世界だと思っていた。

夏目くんと川瀬くんはクラスでのグループは違うけれど、それなりに会話が出来るような仲らしい。

あまり話してるところを見たことがないが、川瀬くんが元気ハツラツな性格の上、裏表がないから、夏目くんも接しやすいのだろう。


「あ、次で降りるけど、花咲さん大丈夫そう?」

「……うん」


今更断る訳にもいかない。だけど、なんだかここで頷くのは気が引けた。

それはどう考えても夏目くんという存在がいるからだろうけど。
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