溺れるように愛して
003:jealousy love
テスト最終日。とにかく朝から気合だけは入れないと、と変に気を張っていた。

苦手な英語があるし、今日で最後だから、と。

そうでもしてないと、ここ最近続いている寝不足には勝てないし、なんなら立ってでも寝れる勢いだった。

ふらふら、と。時々足がもつれそうになるのをなんとか堪え、いつも乗るバスへと駆け込む。

もう既にパンパンな頭に無理に詰め込むよう、英語のスペルや文法を覚える。

何をしてても眠たく、欠伸が止まらない。目には涙が溜まっていく一方だ。

しばらくすると駅前に着き、例の彼が乗車する。

昨日、そして今日も、いつも通り。わたしたちは特別会話を交えたりなんてしない。

おまけにテスト期間は彼の家にも行っていないから、少しだけ、ほんの少しだけ、この彼不足だったりするんだけど。

朝日に照らされるように、艶を放つ黒髪。その髪に、あの時だけは触れていいんだなぁと思うと恋しくなる。

あの時、あのベッドの上だけ、わたしは彼に触れることを許される。
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