溺れるように愛して
「おはよ」


8時10分。まだ疎らな教室では、いつだって私よりも先に登校し優雅に読書を嗜む黒髪美人の存在。

そんな彼女に声をかけると、落としていた紙の綴りから顔をあげ、同じようなトーンで「早いね」と返ってくる。


「そう？」

「ここ最近は10分早い。朝が弱いくせに」


あの彼には可愛い幼馴染がいるように、私には笑顔の少ない無愛想だけど美人な門松紗子という幼馴染がいる。

口数も少なく、ＪＫという横文字を使うよりは女学生と表した方が似合っているような、どこか古風な雰囲気を醸し出している。

そんな彼女の鋭い指摘から逃げるように「寒かったぁ」と自分の席に逃げ込む。

朝は苦手だ。早起きをするのなんて昔から得意ではなかった。そんな私が突然早く登校してくるんだから、彼女からしてみれば違和感以外のなにものでもないのだろう。
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