溺れるように愛して
「来て」


ベッドの上からお誘いを受けてしまえば、引き寄せられるみたいに彼の元へと歩む。

ぎぃ、と静かに軋むベッドの上で二人揃うと、口に出さなくてもそれっぽい合図に変わる。

甘く、溶けてしまいそうな、どろどろな雰囲気。

彼はわたしの首元に顔を埋め、そのまま舌を這わせる。

声が漏れそうになるのを堪えて、彼の背中に手をまわす。



だめだ、抵抗しなきゃ、

頭では分かってる。自分にも言い聞かせてる。


なのに、体は言うことを聞かない。

彼の匂いが充満したこの部屋で、わたしは見事に夏目朝陽という男に毒される。


「なんで我慢してんの?」
「し、てないよ」
「してんじゃん。いつももっと喘いでんの聞いてるよ」


首、そして耳が弱いことをこの男は知ってる。だから吐息混じりにわたしが気持ちよくなる舐め方で攻める。


「ねぇ、聞かせてよ」


そう耳元で喋られると、ぞくぞくして、体が疼いて自分を止められなくて。

何分、何十分と攻められれば、わたしの思考はもうコントロールなんて出来なくなる。
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