溺れるように愛して
「……夏目くんってさ」


することを済ましながら、ベッドの上で綺麗に並べられたぬいぐるみを見つめていた。


「あのぬいぐるみ、本当にくれないよね」
「あー…あの可愛くないやつ?」
「そう、可愛くないぬいぐるみ」


初めてこの家に来た時、わたしが欲しいと言ったぬいぐるみは結局もらえなかった。

未だにずっとこの部屋で飾られている。


「可愛くないならくれてもいいじゃん」
「やだよ」
「なんで?」
「なんとなく」


そんな理由でくれないなんて理不尽だ。

なんでもくれると言ったのに。


「もしかして、わたしが抱きしめたの嫉妬してる?」
「嫉妬?」
「わたしが抱いたから、ぬいぐるみに嫉妬してるんでしょ」


視線を外し、少し考える素振りを見せながら「さぁ」と濁される。

いつだって答えはくれない。どんな時でも。


「じゃあ、わたしが川瀬くんと一緒にいるのは?」
「え?」
「嫉妬しないの?」


冗談に身を任せて、言ってやった。なかなか勇気がないと言えないことを、流れにのるように自然を装って口にする。

今度は視線を外さない彼。考える素振りも見せず、真っ直ぐにこちらを見る。
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