月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 確かに『大きくなったら結婚しよう』って言われたし、結婚するだろうなって思ってたけど、いざ口に出されると変に意識しちゃう。

 紅くんを見上げると余裕そうな顔で首を傾げて、自己紹介をするように目で訴えられた。

 視線を前に移し、改めて幹部たちや構成員たちと向き合う。



「胡蝶茜です。これからよろしくお願いします」



 普通に自己紹介をしたつもりなのに、全体的にザワついた。



 あれ、何か変なこと言った・・・?



 私の疑問を見透かしたように紅くんが答えてくれた。



「茜が敬語を使ったからだよ」

「えっ」

「茜の方が立場が上なんだから敬語なんて使わなくていいんだよ」

「なるほど・・・。じゃあよろしくね」



 仕切り直すと、右手前に座っている人と目が合い、ぺこりとお辞儀された。

 瞳と同じ黒茶色の髪をオールバックにしてきっちりと固めている。

< 100 / 278 >

この作品をシェア

pagetop