月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 ついでに抱きしめる力も強くなる。



「今は茜を抱きしめるのに忙しいから食べさせてくれる?」

「へっ?」

「お仕事頑張ったから疲れてるんだよね」



 上目遣いで私を見上げてくる。


 紅くんが私に甘えるようなことを言うなんて珍しいなぁ。

 さっき疲れがとれたように見えたのは私の気のせいだったのかな。

 そりゃ泊まりがけで仕事してきたんだから疲れるよね。


 今日は私が甘やかす側になろうと、生チョコを1つとって口元に運んだ。



「ほら、あーん」

「ん」



 私の手ずから食べる紅くんは小動物みたいで可愛い。



「どう?」

「美味しい。もっと食べたい」

「ふふ、いいよ」



 さっきと同じように食べさせようとしたら、今度は手首を捕まれ固定された。
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