月ノ蝶、赤縄を結ぶ

　そのまま私の手ごと口に運んでいく。

　紅くんは生チョコをパクリと食べた後、私の手を少し舐めた。



「紅くん･･･！？」



　私の動揺をよそに、手についたココアパウダーを中心にチロチロと舌を動かしていく。

　舌を覗かせながら私の指を執拗に舐める紅くんが色っぽくて目を逸らせない。

　指から全身に熱が伝わっていく。

　このときの紅くんは、間違いなく男の人の目をしていた。

　すっかり私の手を堪能した紅くんは、幸せに満ちた顔で私に微笑んだ。



「茜も甘くて美味しいね」

「それはっ」



　ココアパウダーがついてたからでしょ、と言う前に口を塞がれた。

　いつもみたいに短いキスが繰り返される。


　今日はチョコの味がした。

　その蕩けるような甘さに酔ってしまいそう。


　私は未だに息継ぎのタイミングが上手く掴めない。

　また酸素が足りなくなって紅くんの胸を押した。

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