月ノ蝶、赤縄を結ぶ
紅くんは食べ終わった串をお皿に置きながら私を見た。
「行っても意味がないからだよ」
「どうして?」
「学校で学んだことは大人になってもほとんど使わないから」
「そうなの?」
だったら何でみんな学校に行くの?とあらたな疑問が浮かんだ。
それに答えるように紅くんが続ける。
「仕事にもよるけどね。少なくとも俺は使わないよ」
「へ〜。じゃあ紅くんは大人になったら何になりたいの?」
「親の仕事を継ぐ予定だよ」
「親の?紅くんのお父さんとお母さんは何してるの?」
紅くんの両親が一緒に住んでいないことは、ここに初めて来た日に聞いた。
身の回りのことはシャテーがやってくれるらしい。「シャテーって誰?」って聞くと「部下みたいなものだよ」と教えてくれた。
数年経ってそれが舎弟だと気づくのはまた別の話だ。
紅くんは少し悩んだ後、首を傾げながら口を開いた。