月ノ蝶、赤縄を結ぶ



「茜が謝ることじゃないよ。俺がもっと警戒しておけばよかった」



 紅くんが掠れた声で言った。



 あぁ、そうだ。

 紅くんは何でも自分のせいにしたがるんだった。



 そんな紅くんに伝えるべきなのは謝罪じゃない。



「紅くん、守ってくれてありがとう」



 紅くんが抱きしめる力を強めた。

 私も同じ強さで応える。

 お互いが生きてここにいるんだって実感できるように。



「・・・うん。これからも茜のことは俺が守るよ。絶対、何があっても」



 語気を強めて告げられた、心強い言葉。

 それなのにどこか危うさを感じる。



「ありがとう。でも自分のことも守らなきゃダメだよ」



 だから念を押した。

 紅くんは項垂れるように肩口に顔を埋めた。

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