月ノ蝶、赤縄を結ぶ



 時峯島。

 それは数十年前、当時日本を牛耳っていた大財閥である時峯グループの会長が人工的に作った島の名称だ。

 そこでは国の法律があまり通じず、時峯が全権力を握っている。



「じゃあそこに俺らみたいなのが居座ってるってのは?」

「ううん。知らない」



 ふるふるとかぶり振ると髪が当たったらしく「くすぐったいよ」と笑われた。

 それからペンと紙を取り出して時峯島の裏事情を説明してくれた。



 時峯島は治外法権状態であるため、月詠家をはじめとする様々な裏社会の人間が蔓延っている。

 その勢力は大きく分かれて月詠家、烏賀陽(うがや)家、國光(くにみつ)家、日暮(ひぐらし)家の四つ。

 時峯は半年に一度定期報告会を開くことと島内の治安維持に協力することを条件に彼らが居座ることを容認している。

 この場合の島内の治安維持とは第三の勢力からの防衛を意味するだけで、紅くんら四大勢力同士の抗争は黙認されている。

 前に紅くんが言っていた本部とはこの島のことだ。

 今は幹部の一人である蘇芳が代理で取り仕切ってくれている。
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