月ノ蝶、赤縄を結ぶ
 この脅し方を使ったのは私だけど、思っていたよりも効果てきめんすぎてビックリした。



 紅くんってちゃんと若頭として恐れられてるんだ・・・。

 あまり想像つかないかも。



 気を取り直した臙脂にお茶を勧められ、一息ついたところで緋呂が話し始めた。


 鈴井雛菜。

 彼女は月詠会の下部組織である鈴井家の長女であり、紅くんの婚約者だった。

 2人は紅くんが8歳、鈴井雛菜が5歳のときに婚約した。

 ただそれは2人が好き合っていたからとかではなく、両家の政略的な理由で結ばれたものだった。

 そして婚約破棄されたのは3年前で紅くんが21歳のとき。

 それまでの間、2人はどんな形であれ結婚を約束した間柄だった。

 つまり私が紅くんと一緒に過ごした時間の裏にずっと潜んでいたってことだ。


 何も悪くないと分かってるけど、鈴井雛菜への嫌悪感がたまらない。

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