月ノ蝶、赤縄を結ぶ
ただ、人のぬくもりを感じることができなくて、急に寂しくなっただけだ。
紅くんの家で食べる物は全部、こうじゃなかった。
このお弁当と同じように既製品を買ったものだけど、確かにぬくもりがあった。
『いらっしゃい茜』
ふと私のことを迎え入れてくれた紅くんのことを思い出した。
笑ってはいないけど、私を静かに見守ってくれる端麗な顔。
抑揚がなく低くて落ち着く声。
壊れ物を扱うように私を抱き上げる腕。
ありのままの私を受け入れてくれる人。
「紅くん・・・」
早く会いたい。
寂しい。
ここは寒いよ。
凍えちゃいそう。
とめどなく溢れてくる涙を止めることは出来なかった。