月ノ蝶、赤縄を結ぶ






「おじゃましまーす!」

「あれ、いつもより早いね」

「走ってきたの!」



 ランドセルを玄関に置いて勢いそのままにぴょんっと飛びついた。

 紅くんは重心がぶれることなく受け止めてくれた。

 鍛えているのか、紅くんは体感がいいしお腹も硬い。



「どうしたの?今日は甘えん坊の日?」

「うん」



 早く会いたかった。

 昨日泣いちゃったからいつもよりも強く。

 紅くんは一向に離れない私をひょいっと横向きに抱き上げて、自室へと運んだ。

 そして畳に下ろさず、そのまま膝の上に乗せてくれた。



「・・・何か嫌なことでもあったの?」

「ううん。なんとなくさびしかっただけ」

「そっか」



 そのまま紅くんの胸元に頭をあずけると、ぽん、ぽん、と背中を叩いてくれた。
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