月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「ん?」

「大好き。愛してる。私も、結婚したい!」



 たどたどしい口調で一生懸命気持ちを紡いだ。

 紅くんは心底幸せそうに破顔した。

 婚約指輪を私の左手の薬指にはめ、私に見せつけるようにキスをした。

 胸がいっぱいいっぱいで、紅くんの言動一つで心が震える。



「でも、なんで、私が貰ってばっかなの。今日は紅くんの誕生日なのに」

「俺も充分もらってるよ」

「え・・・?」



 私の目元を拭いながら、愛おしそうに顔を覗き込んだ。



「茜の照れ顔とか甘える声とか、俺だけに向けてくれるもの全部」



 真黒い瞳が私を射止める。

 私は今日、紅くんに何回ときめいたんだろうか。

 とても多すぎて数え切れない。

 その瞳を私でいっぱいにしたくて、首に腕を回した。



「これからもぜーんぶ紅くんのものだよ」



 涙を弾くような屈託のない笑みで告げた。
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