月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 紅くんの瞳が揺れた。

 ぐいっと腰に腕を回され、覆い被すようなキスをされた。

 まるで映画のワンシーンのよう。

 重心が後ろに傾いてもちっとも怖くない。

 紅くんの頼もしい腕が支えてくれているから。

 気持ちを吐露しながら、キスを重ねていく。

 唇が離れると時折粘り気のある糸をひいていた。

 それに引き寄せられるようにまたキスをする。

 心だけではなく、身体も満たされていく。

 泣いたからか、夕日が眩しいからか、頭がぼんやりとしてきた。


 そして紅くんの舌が私のそれを絡めとったとき、脳裏で白が弾けた。


 甘い痺れが全身を駆け巡る。


 それと同時に脚の力が抜けてしまい、紅くんにぐったりともたれかかった。



「茜、今──」

「い、言わないで!!」



 初めてだったけど、自分の身に何が起こったのか本能的に分かった。
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