月ノ蝶、赤縄を結ぶ
晩餐会で帽子をかぶってまで隠すぐらいだし。
だからびっくりしたのかな。
「それは誰からの遺伝なんだ?」
ややあって蒼くんが疑問を投げかけた。
「知らない。お母さんではないよ」
今までお母さんから聞いたことはないし、興味もなかったから考えたことすらなかった。
多分お父さんの遺伝だと思う。それか祖父母からの隔世遺伝か。
どちらとも会ったことがないから分からないけど。
自分の髪を指にくるくると絡めてみる。
紫がかった黒髪。
生まれながらのくせっ毛で、何もしていないのにゆるくウェーブがかかっている。そのせいでお手入れが大変だ。
沈黙を破るように紅くんが私の頭を撫でた。
「そんなのどうでもいいでしょ。髪が何色だろうと茜は可愛いんだから」
「おい、いきなり惚気んなよ」
何故か紅くんじゃなくて蒼くんが照れ臭そうに顔を歪めた。